光学バンドギャップが大きく光電導率の高いアモルファス炭化シリコン薄膜の作製法として、メタンとシランガスを別々のプラズマ室に導入して分解する分離励起型プラズマCVD法を提案し、その有用性について研究を行ってきた。本研究ではさらに発展させた方法として、プラズマ室先端にキャピラリーを設置することによりラジカルを膜成長表面上へ選択的にかつ方向性を揃えて導入することができるラジカルビームCVD法を考案した。この方法は、分離励起型プラズマCVD法に比べ膜堆積速度が1桁以上速い。また従来のプラズマCVD法により作製された膜に比べ、光学バンドギャップが2.9eVと大きい膜が得られた。光学バンドギャップが2.5eVから2.9eVの膜の光電導率は、従来法による膜の値より2桁程度大きい。しかし、光電導度の暗電導度に対する比(感度)は数十程度と小さい。これは、暗電導率が従来法の値に比べて3桁程度大きくなっているためである。この原因は、膜中の水素含有量が多く、多くのボイドが存在するためと考えられ、水素含有量を低減する方法を併用する必要がある。 キャピラリを用いることによりプラズマ室と堆積室との間に圧力差を設けたが、その圧力差は十分ではなく、メタン側プラズマ室にシランガスが堆積室より逆流し完全な分離ができていない。またキャピラリアの穴の大きさによっては、アモルファスの膜が堆積するのではなく、微粒子が堆積する場合がある。そのため、膜作製に適したキャピラリの穴の大きさおよび穴の数(開孔率)の最適値を求める必要がある。また、本研究において計画していたラジカルの測定も併せて行っていかなければならない。
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