太陽光発電は、地球規模の環境問題を解決するためのクリーンなエネルギー源として大きく注目されている。この太陽光発電を実用化するためには、低価格で高効率の太陽電池を開発することが重要であり、CuIn_xGa_<1-x>Se_2/Siタンデム型が有望であると考えられる。そこで、本研究ではSi基板上にCuIn_xGa_<1-x>Se_2薄膜を作製し、その基礎特性を評価した。基板に結晶Si(100)、(110)、(111)の3種類を使用し、基板温度を室温から400℃まで変化させ、高周波スパッタ法によりCuIn_xGa_<1-x>Se_2薄膜を作製した。評価方法として、組成分析は電子プローブ微小分析(EPMA)、結晶性はX線回折や反射高速電子回折(RHEED)、結合状態と深さ方向の組成分析はX線光電子分光法(XPS)を用いた。作製した薄膜は科学量論組成に近いものであり、深さ方向の組成分析はほぼ均一であった。また、基板温度400℃で作製しても薄膜中へのSiの拡散は認められなかった。薄膜のX線回折パターンは、すべてカルコパイライト構造CuIn_xGa_<1-x>Se_2からの回折線に対応付けられ、他の結合を示すピークは観測されなかった。基板温度の上昇とともに、基板の面方位に依存せず(112)面に強く配向した薄膜が得られた。特に、Si(111)基板上に400℃で作製した薄膜では、この(112)面への配向度は0.983であった。さらに、400℃で作製した薄膜のRHEEDパターンには(112)方向に配向したスポットが観測され、基板温度の上昇とともに結晶性が改善されることがわかった。したがって、Siの面方位による薄膜への影響は認められず、CuIn_xGa_<1-x>Se_2/Siタンデム型太陽電池を作製する場合、従来からSi単結晶太陽電池で用いられている(100)基板をそのまま使用できることが明らかになった。
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