ポーラスSiは室温において強い可視光のルミネセンスを示し、光学素子への応用が期待される。しかし、この発光の起源について、量子サイズ効果説と表面化合物説が提唱されているが、まだ解明されていない。また低次元のSi構造においては、量子サイズ効果を直接観測した報告はまだなされていない。本研究では、ポーラスSiの発光特性を研究し、その発光起源を明らかにし、新しい光学素子を開発することを目的としている。また、ナノメーターサイズのSi超微粒子を作製し、ゼロ次元に閉じ込められた電子ガスの光学的、電気的特性を評価する。平成5年度において、本研究の結果を以下にまとめる。 本研究ではまず、ポーラスSiの可視発光の劣化を防ぐ陽極化成プロセスを開発し、安定で、強い可視発光を示すポーラスSi材料を作製した。ポーラスSiは光照射や熱処理によって、その発光強度が著しく劣化する。本研究では、ポーラスSiの終端化原子に塩素を加えることによって、ポーラスSiの発光の高効率化と劣化を抑えることに成功した。 本研究では、ポーラスSiを種々の雰囲気中で熱処理し、また条件を変えてエッチングし、その発光特性の変化を評価することにより、ポーラスSiの発光エネルギーとSi-Hx吸収強度との線形関係を明らかにし、終端化原子と一体化したSiの微粒子モデルを提案し、ポーラスSiの可視発光を理解する包括的な光遷移過程を説明できた。また、本研究では、粒子サイズが3nmのSiの超微結晶薄膜を作製し、量子サイズ効果に起因かる可視光のルミネセンスをはじめて観測した。
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