低いキャリア密度と短いコヒーレンス長に特徴付けられる酸化物高温超伝導体における電界効果は、電荷輸送を電界効果によって制御するタイプのデバイス開発といった観点から有望視されるだけでなく、高温超伝導材料のキャラクタリゼーションの手段として精力的に研究されている。一方、酸化物高温超伝導体の傾角粒界は、弱接合として機能することからYBCAなどのc軸配向薄膜を用いてジョセフソン接合を実現する手段として広く用いられている。また、人工粒界接合には単結晶薄膜に比べて大きな電界感受性が期待できることから、本研究ではYBCA人工粒界ジョセフソン接合における電界効果に関する調査研究を行った。バイクリスタルSTO基板上に成膜した膜厚600ÅのYBCA薄膜を用いて接合の幅約30mumの人工粒界ジョセフソン接合粒界接合を作製し、STO基板の裏面にゲート電極を設けてゲート電界(最大約20kV/cm)を印加したときの接合特性の変化を調べた。接合の臨界電流I_cは負極性のゲート電圧によって上昇し、正極性のゲート電圧を印加したときには低下した。この傾向は、ゲート電界によってもたらされる粒界のキャリア密度の変調(DELTAn/n〜数%)と矛盾しない。また、粒界接合の電流電圧特性にはcoplanar slot型の共振器と見なすことのできる粒界接合に交流ジョセフソン効果によって輻射された電磁波が共振するいわゆる自己共振ステップ(Fiske Steps)が観測され、しかもその共振周波数がゲート電界によって大幅に変化することを見出した。これはゲート電界によって粒界接合の誘電的性質が大きく変化することを意味しており、Tunable Josephson Oscilator等への応用が期待される。
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