研究概要 |
YBa_2Cu_3O_<7-x>薄膜の臨界点近傍での光応答を調べた.超伝導体を臨界点付近に置き光を照射すると抵抗が生じる.その機構には,熱による温度上昇効果(ボロメトリック効果)とそれ以外の効果(ノンボロメトリック効果)があり,ノンボロメトリック効果には,光子がク-パ-対を直接破壊する機構や,トラップされた磁束が光によって移動し電圧が生じるフラックスクリープの機構などがある.しかし,実際どの機構が支配的なのかはよく分かっていない.ノンボロメトリック機構においては,高速かつ可視光から遠赤外光におよぶ広い波長領域での応答が期待され,これによって高速・広帯域な光検出素子ができる可能性がある.そこでまず応答速度を調べた.振幅変調された半導体レーザ光(波長830nm)を超伝導体のブリッジ(幅25mu,長さ400mu,厚さ100nm)に照射して,4端子法により得た応答信号をプリアンプで増幅しダブルバランストミキサ(DBM)を用いて中間周波におとしてロックインアンプで検出した.その結果,最高100MHzまでの応答が確認できた.しかしそれ以上の応答はプリアンプの性能および測定回路のインピーダンス整合の問題によって測定することができなかった.次に応答がボロメトリックかノンボロメトリックかを判定した.そのためには信号の温度依存性を詳細に調べる必要があり,その結果,100KHzまではボロメトリック応答が支配的であるが,1MHzあたりでクロスオーバーして,10MHz以上ではノンボロメトリックな機構が支配的であることがわかった.最後にノンボロメトリック機構の解明のために,電流-電圧測定における非線形性を測定した.その結果,信号と非線形性は強く関連していることがわかった.しかし,これは研究途中であり,どの機構が支配的かの確証は得られていない.
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