研究概要 |
高温超電導体を磁心として用いた,磁気マルチバイブレータ回路は,マイスナー効果を利用して,入力パルスにより,瞬時にその発振のオン・オフが制御できるためスイッチモジュールとなること,および入力オンパルスの極性を発振の位相で記憶する論理素子となることをわれわれは,これまで報告してきた.今年度は,このモジュールを多数個用いて論理演算するために,多数個のマルチバイブレータ回路の発振周波数を一致させる目的で,周波数引き込みに関する実験を行った.具体的には,多数個のマルチバイブレータ回路の超電導磁心に共通の巻線を施し,交流電流を用いて,その巻線を通じて各磁心に共通の微小起磁力を与える方法と,各磁心を接近させ,異なるマルチバイブレータが生ずる発振磁束を互いに共有させることにより周波数引き込みを行わせる方法の2通りについて検討を行った.いずれの場合についても,マルチバイブレータ間の周波数を一致させることは可能であり,さらにおのおののモジュールを独立にスイッチングさせることが可能であるという結果が得られた.従って,このモジュールを多数個用いて位相による多数決論理演算が可能であるということであり,ニューラルネットワークへの応用が可能である.また,周波数引き込み現象の理論的な解析を行い,引き込みの起磁力と引き込みの周波数範囲の関係について重要な知見が得られた.さらに,多数決論理演算システムとして,3個のモジュールを用いたシステムを構成し,AND回路およびOR回路の動作を確認した.接合型FETと超電導磁心の組み合わせによる,高速発振回路を作製し,40MHzまでの発振を確認した.コイルのQ値と発振条件の関係を解析した結果,発振周波数の上限は100MHz程度であるという知見が得られた.
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