研究概要 |
本研究ではまず強誘電体膜の配向方向を検出するため静電引力型ダイナミックモードフォース顕微鏡を改良して表面電位像と表面像が同時計測可能なケルビンプローブフォース顕微鏡を制作した.この顕微鏡では探針が表面に接近すればするほど電位分布計測時の分解能は向上するが,サンプルの形状により接近限界が大きく異なり必ずしも十分な電位分解能が得られないことが分かった.そこでダイナミックモードで測定点以外は表面から大きく離れてフィードバック動作を行わない新しい走査法を電気部品等を購入し開発した.この新しく開発した走査法の有効性を確認するため,フォトマスクを購入し,導体サンプルや絶縁体のサンプルを作成した.この観察の結果,サンプルによらず約10nm以下まで探針を接近でき,電位横分解能も数十nmで安定して測定できることを確認した.さらに探針に高電圧をかけて強誘電体に接触させ配向方向を変えるためには接触力の制御も必要不可欠である.従来のダイナミックモードではそのような制御は不可能であったが,この新しく開発した走査法では,非接触動作のみではなく接触力を10^<-8>N以下に制御して接触動作もできることを確認した. さらに検出感度を高めるため真空部品,光学部品等を購入し,顕微鏡全体を真空チャンバ内で動作できるように改良を行った.これにより,検出感度の目安となる探針のQ値は,10^<-4>Torr台では100程度向上することを確認した. 次に強誘電体の膜(PVDFなど)をアルミ電極上にコートし,サンプルを作成し,配向を変化させ,その情報を取得する実験を行った.その結果,安定して配向情報を得るには至らなかったが,サンプルの膜厚,結晶性などが大きく影響することが分かった. 以上装置としては,十分目的を達成でき,今後の研究に非常に有効な装置およびデータがえられた.今後,材料面からのさらなる研究が必要であると考えられる.
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