本年度の研究実績は以下のとおりである。既存のフォトリングラフィー技術による細加工及び化学的なエッチング技術により作製した、一面を逆ピラミッド状(一辺数+ミクロン間隔数ミクロン)にエッチングしたシリコン基板上に、本助成金で購入した真空部品及び装置によりダイヤモンドを推積させた。このとき反応ガス中に適当な不純物を添加することで得られるダイヤモンドを半導体化した。次に得られた試料を混酸に浸し、基板として用いたシリコンのみを除去すると、結果としてピラミッド状ダイヤモンド(ダイヤモンドフィールドエミッターアレー)の作製が可能となった。現在までにas-depoの多結晶ダイヤモンドからの電界放出に関する報告はあったが、本研究では形状制御されたダイヤモンドからの電子放出電流を測定することで(外部への測定依頼)、この電流が他の陰極材料と比較し、数ケタ大きいことが確認された。このようなアレー構造を持つエミッターを用いることで、放出点の限定や形状因子を一定に保つことが可能となり半導体ダイヤモンドからの電子放出のメカニズムが解明されると考えられる。 また、今まで傷つけ処理しないシリコン基板上へのダイヤモンドの核形成は難しいとされて来たが、本研究の過程で化学的エッチングを施すことにより、エッチング処理したシリコン基板上へのダイヤモンドの成長が確認された。この成果は、化学的あるいは物理的な見地からのダイヤモンド核形成メカニズムの解明に関する研究にも何らかのヒントを与える可能性を持つ。 ダイヤモンドが現在知られている唯一の“負"の電子親和力を持つ半導体であることを考えれば、半導体ダイヤモンドを用いた冷陰極の作製は今後さらに発展することが予測される。
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