研究概要 |
ワイヤグリッドモデルを用いたモーメント法を用いて板状・線状アンテナを解析する際、Z行列の要素が可逆性を満足するように展開ダイポールの位置を自動的にシフトさせ,放射電力+損失電力が正確に全入力電力となるようにし,電力収支が数学的に取れるようにした改善した。これにより,従前の放射界を全立体角にわたり積分することなく放射効率を計算できるようになり,効率の計算時間の大幅な短縮が図れた。あわせて,予め同一Z行列要素を判定するアルゴリズムを検討し,要素の計算時間を従前の数%以下となるようにした。更に,アンテナ構造の対称性を加味することで,Z行列の逆演算の計算時間の短縮を行った。以上の改善により,大規模な計算が必要となる「小型・薄型アンテナ」の数値解析がワークステション上でも可能となった。 整合の取れた小型・薄型アンテナについて,Wheeler法による放射効率の測定および数値シミュレーションを行うとともに、解析的に得られる効率と比較・検討を試みた。数値解析およびシミュレーションの結果について,アンテナ導体の導電率を純銅の導電率の約1/10と仮定することで,測定データにほぼ一致することが確認できた。さらに,測定値にみられる局所的な落ち込みについてもこのシミュレーションにより確認され,この落ち込みがWheeler法自体に内在する問題点の一つと考えられることが分かった。これについては今後検討を要するものと思われる。またZ行列が可逆性を満足することに着目して,腕時計大の4足ループアンテナについて,モード解析を行い,インピーダンスおよびパタンに関してモード依存度を調べた。その結果,インピーダンスを合成するのには多数のモードを必要するのに対して,パタンは数個のモードによって合成されていることが分かった。
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