本研究は、新しいミリ波集積回路用導波路として提案した高誘電率薄膜線路の基本伝送特性を把握するものであり、周波数50GHzにおいて、以下のような結果を得た。 1.高誘電率薄膜線路の理論的検討 有限要素法をもとに、線路の諸特性を計算したが、中でも線路の単一モード伝送帯域は、薄膜の比誘電率を高くするほど広がり、金属方形導波管のそれに匹敵するという注目すべき特性が得られた。 2.線路の製作誤差が伝送特性に与える影響の実験的検討 高誘電率薄膜線路は平行導体板内の平行対称面に薄膜を配置したものであるが、その対称性が崩れた場合の影響を、2種類の比誘電率からなる薄膜をもとに測定した。結果として、いずれの場合も不要放射が発生し、実用に際しての問題点となった。これは今後の研究テーマとして、更なる検討を続けていく。 3.高誘電率薄膜線路と同軸線路の接続に関する実験的検討 高誘電率薄膜線路の実用性を高めるため、常用される同軸線路との接続方法を考案した。両線路は比較的容易に接続できることが分かったが、この結果は他の集積回路用プリント線路との接続へ発展させていく計画である。
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