まず、導波管アレーアンテナの製作を容易にし大量生産を可能にする構造として、放射導波管アレーと同一の面内に給電導波管を配置する1層給電構造を検討した。電力を同相に分配する素子である誘導性ポスト装荷導波管pi分岐を電磁界解析し、構造パラメータに対する分配電力の振幅位相特性と反射を抑圧するポスト位置を明らかにした。また、ポストは窓での電磁結合に伴う給電導波管の波長短縮を抑圧する効果も有することを示した。さらに、このpi分岐を複数縦続接続し、同振幅同位相の電力分配器を実現する設計法を示し、分配位相の周波数特性が給電導波管の長線路効果でほぼ決まることを明らかにした。 次に、放射素子である導波管クロススロットの解析を行い、スロット結合に伴う管内波長短縮効果により、漏れ波動作におけるビームチルト角が従来知られた値より10度以上大きくなることを明らかにした。素子が密に配置された漏れ波導波管クロススロットアレーを、全ての外部相互結合を考慮して解析し、各素子の結合量と軸比を制御して一様開口振幅分布を実現する設計法を示した。さらに、1層給電構造と組み合わせた2次元クロススロットアレーを試作し、解析で明らかになった給電導波管と放射導波管の特性を実験により確認した。良好な開口分布、反射特性、指向性等が得られ、75%というビームチルトアンテナとしては極めて高い効率を実現した。
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