光通信技術の進歩により、光通信における雑音は光自身の有する量子雑音が支配的になりつつある。このような量子雑音が支配的な強度変調-直接検出型光通信における通信路は、シンボル"1"がシンボル"0"に誤る一方向の誤りしかないZ-通信路としてモデル化される。従って"1"から"0"への誤りを全て検出可能な一方向誤り検出符号を用い、誤りの検出された符号語をイレ-ジャに変換すれば、連接符号や繰り返し符号を用いた前方向誤り訂正(Forward Error Correction)方式によって任意に小さい誤り率を達成することが可能である。本研究では、このような誤り率零を達成する光通信方式の一つとして、全一方向誤り符号に1-out-of-m符号を用いたとみなせる符号化光PPM(Pulse Position Modulation)方式に焦点を当て、その性能限界を求めると共に、その限界を達成するような具体的符号の構成について考察を行ない、以下に述べるような成果を得た。 1.誤り率零を達成する光通信方式における2種の性能評価尺度である送信電力利用率(1光子当たりの伝送情報量)と情報伝送速度(スループット)とのトレードオフ関係を符号化光PPM通信方式について明らかにし、達成可能な性能の限界を求めた。 2.上記の評価尺度に基づき、符号長を長くすることで漸近的に符号化光PPM通信方式の性能限界を達成可能な符号として、外部符号を代数幾何符号とし、内部符号を時変符号とした連接符号を開発した。開発した符号は、符号長の多項式時間で複号が可能であり、漸近的に優れた性能を有する代数的符号の中で最大の信頼性関数を有している。
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