本研究では、DQDB(Dual-Bus Distributed-Queue)メトロポリタンエリアネットワークを考え、端末位置に依存したサービスの不公平性解消を目的とした帯域幅均衡機構(Bandwidth Balancing Mechanism)がネットワーク性能に与える影響を、以下の近似解析手法により評価した。まず各端末でのサービス時間は相関性をもつ交代ベルヌイ過程に従うと仮定し、各端末を混合規範巡回サービス型待ち行列システムとしてモデル化し、その遅延時間確率分布の解析を行なった。次にこの待ち行列システムからの占有スロットの出力過程を計算し、その積率が隣接する下流の端末でのサービス過程と一致するように交代ベルヌイ過程のパラメータを決定した。最後に、ネットワーク最上流の端末から逐次計算することにより、ネットワーク全体の性能評価を行なった。 本手法による数値計算及びシミュレーション実験を行うために、ワークステーション及びハードディスクを購入した。またプログラム作成に関して学生の補助を得た。関連図書を購入し、出張により資料収集を行なった。 シミュレーション結果との比較から、本手法は精度の良い性能評価を可能とすることが判明した。特にサービス過程が独立であるという仮定のもとで得られた結果と比べて、顕著な精度向上が認められた。反面、本手法は数値計算にかなりの時間を要するため、数値実験では小規模なネットワークしか扱えなかった。また本解析はネットワークの負荷が飽和しない状態を仮定しており、その結果、帯域幅均衡機構の平均遅延時間に対する影響は微小となった。今後の課題として、より簡単なモデル化と計算量の軽減、並びにトラヒックが過負荷の場合の解析が挙げられる。なお本研究の詳細は別掲の会議録に発表されている。
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