ブランド解析とは、未知システムの入力信号を観測せずに、出力信号のみから未知システムを同定または等化したり、入力信号を復元したりする問題である。まず、オンライン・ブラインド等化の方法には、主に2つの方法があり、1つは分布一致法であり、もう1つは独立化法である。本年度は、分布一致法のブラインド等化法の高速化の理論を論文[1]にまとめ、さらに、ブラインド等化のための評価関数を出力信号によって制御することにより、一層高速化を図る試みを[2]において発表した。また、特性関数を用いて評価関数を設計し、収束の進行に応じて評価関数を切り替える手法により、高速化と収束の高精度化を図る方法を示した[3]。本来、本年度は2番目の独立化法を高速化するアルゴリズムを開発する計画であり、情報理論的観点から考察を加え、いくつかの基本的アルゴリズムとその高速化を実現したが、これは現在、論文を投稿予定中である。一方、オンライン・ブラインド同定に関しては、入力信号の候補と未知システムのモデルから出力信号のモデルを作り、実際の出力信号と比較することにより、未知システムを同時に推定しながら、入力信号の最尤系列推定を行う方法を考えた。これを特に、入力が連続値をとり、候補が無限に考えられる場合でも入力信号候補を量子化することでブラインドシステム同定が可能なことを示し、漸化的最小2乗法であるCodardの方法を用いたビタビ・アルゴリズムによって高速化を行った[4]。 研究の中心は、理論的考察であるが、アルゴリズムの性能評価には様々な条件のもとでシミュレーションを行う必要があり、科研費により購入した高速パーソナルコンピュータが多大な威力を発揮し、研究の推進に非常に有用であったことを、感謝の意を込めて記させていただきたい。
|