本研究代表者により従来提案されていた1対N同報通信システム用誤り制御プロトコルの改良を行う。従来方式は、(1)符号長が無限であるような最大距離分離符号を用いている、(2)送信局と受信局の間の伝搬遅延時間は十分に小さい、等の仮定の下で記述されていたが、本研究において、上記の仮定(1)に関して、符号長が有限である最大距離分離符号を用いた場合のプロトコルを3種類新たに提案し、そのスループット特性を解析した。新たに提案した3種類の方式は、(1)N固定方式-符号長が常に固定された最大距離分離符号を用いる方式、(2)K固定方式-情報記号数が常に固定された最大距離分離符号を用いる方式、(3)D固定方式-最小距離が常に固定された最大距離分離符号を用いる方式、である。スループット解析の結果、符号化率0.5の最大距離分離符号を用いたK固定方式と、N固定方式は、同等のスループット特性を示し、提案方式の中では最も優れていることを明らかにした。また、これらの2方式は、通信路品質が劣悪の場合には、符号長が無限の最大距離分離符号を利用した従来方式のスループット特性と比較して、スループット特性は劣るものの、通信路品質が現実的な値の場合には、従来方式と同等の高スループット特性を維持できることを示した。 今後の研究課題としては、誤り制御プロトコルの性能評価としてスループット特性を同様に重要な伝送遅延特性について検討する必要がある。また、上記の仮定(2)が成立しない通信システムへのプロトコルの改良も残されている。
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