研究概要 |
現代の医療診断において,画像の利用は必要不可欠であり,各種の画像が現場で用いられている.しかし,疾病の診断には多くの経験と熟練した医師の知識を必要とすることから,このような診断知識を明文化し,客観的評価を導入すること,および医師の負担を軽減するために医用画像を用いた自動診断技術の確立が望まれている. 本研究で扱うX線画像はX線を人体に照射し,各細胞の透過率の違いから生じる透過光の強度分布を画像化したものである.一般に,X線画像は他の医用画像に比べて高解像度であるが,使用されるX線は有害であることから,被爆量を軽減するためその線量を最小限に留めた撮影が行われており,得られる画像はコントラストが低く,信号/雑音比の小さなものとなる.したがって,これらのノイズ等に対してロバストな処理手法が必要となる.さらに,抽出標的である腫瘤を形成する細胞群の形状および大きさは千差万別なので,これらを固定したパターンマッチング手法は利用できない. 本研究では,上記の乳房x線画像から腫瘤輪郭形状を自動抽出することである.輪郭形状を求める際によく用いられるエッジ情報は画像の濃淡値を二階微分したゼロ交差が一般的であるが,これは高周波成分に特に敏感なため尺度空間フィルタリングと呼ばれる方法を導入した.この手法はボケを意図的に画像に与えるもので,このボケの量を連続的に変化させることにより高周波ノイズを軽減しながらエッジ点を低解像度の画像から高解像度の画像へとトレースし,最終的に元の解像度の画像上である輪郭線を求めることができる. さらに,上記の定義からエッジ点列は明度の高い領域を囲む閉鎖域である保証はないので,腫瘤輪郭の特徴とは符合しない場合がある.輪郭線を構成とする条件として高濃度であることを付加し,エネルギー最小化問題を構成するスネ-クと呼ばれる動的輪郭線モデルを導入し,新たにこれらの各エネルギー関数を定義し,各部分エネルギーの係数を調整することにより所望の目標輪郭を抽出する手法を提案した.この手法を用いて実際の画像を対象に輪郭抽出をおこない,専門医師の抽出結果と照合したところ面積にして80%を越えるマッチングが得られた.
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