研究概要 |
水晶振動子ガスセンサは水晶振動子上にガス感応膜を塗布したもので、生体細胞膜の構成要素の脂質膜等が有効である。脂質膜の特性は、固相、液晶、液体状態で用いることにより、センサ特性が異なる。この相転移の測定は従来示差熱分析等で行われてきたが、本研究では振動子に膜を塗布した状態で測定を行う。 まずAT-CUT水晶振動子にDPPC,DMPC等のリン脂質膜を塗布し、温度を変えてその共振周波数と損失抵抗を測定した。しかし、乾燥空気中では予想される転移温度でも変化は観察されず、相転移は起きていないことがわかった。そこで、雰囲気の湿度を変化させて測定したところ、ある湿度以上になると共振周波数と損失抵抗の変化が顕著にみられ、これが相転移に対応していると考えられる。リン脂質-水系の示差熱分析を用いた研究でも、脂質内の水含有量が大きく相転移に影響を与える結果が報告されており、この結果は妥当である。 さらに、相転移前後でにおい物質を与えた時の感度を比較した。フェノール、beta-フェニルエチルアルコール等の物質について調べたが、顕著な違いが見られないか、乾燥空気中の固相状態の方が感度が高いという結果が得られた。GC法の膜については、軟化した方が感度が高くなるという結果が得られており、これについてさらに検討を要する。 また、相転移状態を観察するためには、温度に敏感なY-CUT振動子が有効である。2つのY-CUT振動子の一方のみに膜を塗布し、両者の発振周波数の差を計測する回路を試作し、温度走査をしながら測定できることを確認した。今後、Y-CUT振動子から有意な情報を検出することができるかどうか検討する。
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