本研究は、磁束計としての超伝導量子干渉計(SQUID)の小型化・高感度化を目指した研究の一環として実施されたものである。特に、これまで室温エレクトロニクスで行われていたSQUIDのフィードバック回路を超伝導磁束フロートランジスタで構成することに主眼をおいて研究を実施した。以下に本研究で得られた結果について列記する。 1.SQUIDを構成するジョセフソン接合の高品質化・・・・・電極となるNb薄膜中に含まれる不純物(主に酸素)の量がNbの超伝導特性を支配していることを見いだし、高速成膜し不純物の量を少なくすることで、バルクとほぼ同じ超伝導性を有する接合の開発に成功した。また、接合のトンネル障壁となるアルミニウム酸化物の形成機構、最適な膜厚等についても明らかとした。 2.高品質接合を用いたSQUIDの雑音特性の評価・・・・・接合及びNb膜の高品質化によりSQUIDがどの程度高感度化されたかを明らかにするために、接合の品質を変化させてSQUIDの雑音特性を測定した。これまでのところ品質による明確な差異は認められていないが、これは測定系の未最適化および劣悪な測定環境によるものと考えられ、今後これらの点の改善を検討している。 3.磁束フロートランジスタの開発・・・・・酸化物超伝導体YBCOを用いて磁束フロートランジスタの試作およびSQUIDのフィードバック回路として用いるうえで最も重要な利得を中心に動作結果の解析を試みた。これまでのところ、利得は1程度のものしか得られていないが、その原因が加工による劣化層の形成にあることをつきとめ、現在作成プロセスを改善して実験を進めている。
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