近年、複数ロボットの協調制御に関する研究が活発に展開されてきている.しかし、そのほとんどは操作対象物を剛体とし、アーム間の静的な力学関係を制御するための手法の開発に限定されている.しかし、私達の日常生活の中では、紙コップをもって水を飲んだり、豆腐や玉子を操作することもできる。このようなマニピュレーションを実現するため、本研究では、動的な(外力により容易に変形する)作業環境または操作対象物に対して、複数のロボットアームが接触作業を行なうための協調制御策を解析した.その結果、以下のような成果を得た. 1)複数アームと動的な環境の相互作用に関する運動方程式を定式化し、作業要求(位置制御、接触力、内分配分)と協調制御の関係を明確にした. 2)協調制御を実現するための各アーム制御系の動作帯域を解析し、これらの帯域幅を調節するのに必要なアームの制御法をモデルマッチングに基づき求めた. 3)2台のロボットアームの手先に力センサを装着し、上記の制御法に基づき動的な対象物の運搬制御実験を行ない、良好な結果を得て、有効性を確認した. 4)人による動的な対象物の両手協調制御実験を行なった.両手先の接触力、位置情報、並びに手首関節の筋電位(EMG)から被験者がどのような帯域幅と内力配分で協調制御を行なっているかを解析した.その結果、被験者が対象物の機械的インピーダンス特性に応じて、手首関節のインピーダンスをあらかじめ調節して位置制御を行なっていることが明らかになった.すなわち、フィードバック制御だけでなく、環境の内部モデルに基づくフィードフォワード制御の重要性が示され、今後のロボットアームの協調制御を考察するうえで有用な知見を得ることができた.
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