人間の心理状態を反映し、心理テストにおいて用いられる生体信号として指先容積脈波があるが、この信号は被験者が測定中に指や体を動かすことにより波形が乱れ、それが心理テストの結果に影響を及ぼす。特に子どもが被験者である場合、測定中に動きやすいのでこの影響が大きい。そこで、容積脈波の信号系列において、被験者が動いた箇所を自動的に検出し、その箇所を取り除くことが要求される。本研究では次のように、容積脈波において、被験者の動きのある箇所の検出を行う方法を検討し、その有効性を明らかにした。 1.静止時、及び動作時の容積脈波のスペクトル解析:被験者の静止時、及び動作時における容積脈波の周波数スペクトルを求め、静止時にはきれいな周期的波形となるのに対し、動作時には周期性が崩れることを確認した。 2.ウェーブレット変換による解析:容積脈波の信号系列に対してウェーブレット変換を行い、被験者が動いた箇所の検出を行った。すなわち、静止時においては、ウェーブレット変換の基調周期成分の出力値が常にほぼ一定となるが、被験者が動いた箇所ではこの成分に対する出力値が減少する。また、動作時の容積脈波では、ある中間的スケールに対する出力において大きな値が現れる。このように、ウェーブレット変換結果を見ることにより容積脈波における動きの部分が識別できることを明らかにした。 3.ウェーブレット変換の各出力に対する統合的判断:上記のように、ウェーブレット変換の各成分出力に対し、特定の一つの成分だけからでも動きのある程度検出できるが、必ずしも完全には検出できないので、複数個の成分出力から統合的に判断する必要がある。ここで各成分出力に対してルール(ファジィルールなど)を構築し、人工知能的手法により検出を行うことが考えられるが、これについては今後の研究課題である。
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