先に提案した研究計画に基づいて説明する(以下に研究計画の概要)。 1.修正項を加えたハイゲインフィードバックと、正実関数の自由度を利用した適応則からなる適応制御を、次数、非線形構造、相対次数が未知(ある範囲で)の系の安定化問題に適用する。 2.以上の手法を同じ設定のモデル規範形適応制御問題に適用する。適用則の中に、有界の誤差を許容するような修正項を加える。 3.相対次数が考えている範囲の外にある場合のロバスト性を調べる。特に局所的な安定領域を明確に求める。 4.相対次数をさらに一般化して、大局的な安定性が保証されるハイゲイン形適応制御系のクラスを拡張する。 5.以上の手法をロボットマニピュレータや分布定数系(無限次元系)の制御問題、非線形オブザーバ問題、さらに柔軟構造物の制御問題に適用する。単に次数や非線形構造に依存しないだけでなく、特に速度フィードバックを必要としない適応制御系の構成を目標とする。 1については先年度のうちに既に口頭発表していて、今年度はそれを適応モデル追従制御に拡張して(研究計画の2)口頭発表をし(国際会議)論文にまとめた。また3の相対次数に関するロバスト性についても一部調べて口頭発表した。4については相対次数が既知という前提のもとで相対次数分の次元の階層的な仮想システムを考えることにより、任意の相対次数についてハイゲインフィードバックを用いた次数依存性のない適応制御系が構成できることを導いた。その結果の一部は現在まとめているところで、今後学会発表や論文発表の形で公表する予定である。なお研究計画の5については、十分な検討に至っていないが、今後は2、3、4の内容とあわせて研究を進める予定である。まず研究計画の2と4を考慮したハイゲイン形適応制御系の拡張の可能性については至急に検討を始める予定である。
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