湖における富栄養化現象が問題になって以来、多くの湖で流入栄養塩の削減、底泥の浚渫などが検討され実行に移されている。しかしながら、流入栄養塩に関しては、ある程度の精度で評価が可能となっているが、底泥からの栄養塩の溶出に関しては、実地観測の困難さから実験的に検討がなされているのが現状で、しかも水深の比較的浅い湖では底泥の物質特性が場所的に大きく変化しており、底泥からの溶出量を精度良く評価できていない。 そこで本研究では、底泥からの栄養塩溶出量を評価するために、鳥取市西部に位置する湖山池(湖面積6.9km^2)を対象として、底泥の物質特性、間隙水の栄養塩濃度の分布特性を検討するとともに、現地試験および室内実験によって栄養塩の溶出速度を測定した。得られた主要な結果を示すと以下の通りである。 1)夏期および冬期に間隙水中の栄養塩濃度を測定した結果、まず、無機窒素に関しては、夏期はNH_4-Nが主成分で、比較的高濃度がであるが、冬期では全体的に濃度が低く、NO_3-Nが主成分である。無機リンに関しては、夏期に濃度が高くなる傾向にあるが場所的変化が著しいが、流入河川の河口部に高濃度の場所が存在することが観測された。 2)栄養塩溶出の現地試験の結果、無機リンの場合、嫌気状態で非常に大きな溶出が観測された。この値は溶出速度に関して好気状態の100倍程度であり、嫌気状態の発生がリン溶出量に大きな影響を及ぼすことがわかった。 3)栄養塩の溶出量に関しては、無機窒素に関してはある程度推定が可能であることがわかったが、無機リンに関しては嫌気状態の把握が問題であり今後の課題として残った。
|