本研究では独自に行った家庭訪問調査データをもとに、以下の2点のモデル分析を行った。 第1に、道路整備の影響を考慮しアクセシビリティを反映しうる構造を前提とした発生頻度、目的地選択行動のモデル化である。特に観光地目的地選択モデルでは、簡便な魅力度変数の定量化と選択肢集合の分割・統合化に対応しうるelemental alternativesの考え方の導入し、需要推計作業上より実用的なモデルの開発がなされている。 第2に、観光行動の周遊行動を経路選択、目的地選択といった局面で捉え、それぞれを非集計行動モデルで表現し、滞在時間分布モデル(duration モデル)と結合させ、時間帯別の発生量、分布交通量、経路交通量をも一つのシステムの中で同時に推計可能なシステムを構築した。さらにこのシステムの他地域への移転可能性を検証し、その有効性を確認した。 両モデルシステムを統合し、交通環境の変化による都市間および観光地域内における観光交通需要の変動を把えることが可能となった。さらに、このシステムの拡張的な活用方法として、観光地における自動車交通により発生する大気汚染物質の排出量の評価が可能となり、観光地域における道路ネットワークの拡大、改良、さらに観光開発が環境に対してどのように影響を及ぼすかを評価することが可能となっている。 以上の結果を反映し、観光交通のモデル分析方法論と観光交通計画の策定支援システムを体系化するための基礎的な検討を、本研究の成果として取りまとめた。
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