本研究は、衛星マルチスペクトルデータと各種地理情報を融合して土地利用構想図を作成する新しい手法を提案したものである。すなわち、これまでに著者らが開発してきた土地分級評価手法(潜在因子モデル)の適用範囲を拡張することによって、簡便で使い勝手の良い地理情報の利用方法を示すとともに技術者支援型の新たな土地利用構想図の作成方法を提案した。得られた成果は次の3点にまとめられる。 (1)自然的要因と人為的要因といった2つの視点から分級評価項目を区分し、潜在因子モデルによって評価目的別の分級評価図を作成する基本的考え方を整理した。 (2)作成された複数の分級評価図を様々に組合せ、計画者のニーズに柔軟に対応できる「土地利用構想図」を作成するためのアルゴリズムを提案した。具体的には評価主題を設定した上で、それに対立する分級評価項目との関係から「開発と保全」行為に対する「相互調製の必要性の有無」といった情報を土地利用構想図上に色分けして表現した。この表現形態は既往の研究には見られないものであり、「整備、開発または保全の方向性」を示す計画意志決定を支援していく上で極めて有用な情報であることを示した。 (3)分級評価結果を活用しやすくするために標準化した整理書式を提案した。現地調査時にこの整理表を参照するとともに土地利用構想図と併用することによって様々な視点から評価が展開できることが確認された。 リモートセンシングとGIS(Geographical Information System)といった2つの技術を融合利用し、計画策定過程における意志決定支援を目指した「空間データの分析/モデリング機能」の開発に係わる研究は、現在世界的にも注目されている。本研究の成果はまさにこのような方面における今後の研究の展開にも大きく寄与するものと期待できる。
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