膜分離法を用いた浄水プロセスでは必然的に膜濃縮廃液が生成するが、この処分方法についてはこれまであまり検討されてこなかった。本研究では膜分離パイロットプラントから生成した膜濃縮廃液を対象として、その処理処分方法について検討し、以下の知見を得た。 1 河川への直接放流 水道施設であって浄水能力が1日あたり1万-以上のものは、水質汚濁防止法における特定施設の指定を受け、その排出水が規制される。この場合、膜分離プロセスでの濃縮率が高すぎると浮遊物質量(日間平均150mg/L)、溶解性マンガン含有量(10mg/L)などの項目において水質基準を超える可能性がある。排水の濃縮を行わない1段の膜濃縮施設での処理水回収率は85から95%であり、原水汚濁が10mg/L程度であるとすると、濃縮液濃度は70〜200mg/L程度になる。従って、濃縮率は90%程度で運転する必要がある. 2 下水道に放流する 特定施設からの排水基準については各自治体が定められるものとなっているが、下水処理水の放流基準が浮遊性物質について70mg/Lであることを考慮すると、上記の濃度は許容範囲内であるといえよう。しかし、下水道の持つ本来の役割から考えて、上水で発生した汚泥を運搬処理するのは問題である。 3 汚泥処理を行い、分離液を処理系に戻す。 膜濃縮液中にPACを添加して凝集処理した場合、通常の急速ろ過法に比べてPACの必要量は1/50程度である。従って薬品の所要量は削減できるが、汚泥の濃縮・分離については従来と同様な方式をとらざるを得なくなり、膜分離法の利点が少なくなってしまう。
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