研究概要 |
実処理場の活性汚泥の硫酸塩還元活性を測定する方法を開発するために、返送汚泥と曝気槽流入下水を採取し、種々の方法で回分実験を行った。その結果、流入下水に有機物や硫酸を添加しても硫酸塩還元速度は変わらないこと、汚泥濃度は2,000mg/l程度が妥当であることが明らかとなった。また、バイアル瓶よる振倒培養とふ卵瓶による攪拌培養を比較した結果、振倒培養では有機酸生成速度が律速になるために硫酸塩還元速度が遅くなることが明らかとなったため、攪拌培養を行うこととした。 この方法で嫌気好気法を採用している処理場の活性汚泥について数回の回分実験を行った結果、硫酸塩還元速度の早い活性汚泥には糸状細菌Type 021Nが多く存在している事が明らかになった。また、処理場の各地点で採水を行い、水質分析を行った結果、曝気槽内の硫酸塩濃度が低いときおよび好気部に持ち込まれる酢酸濃度が高いときにType 021Nが多く増殖することがわかった。これらのことから、硫酸塩還元が起こると、生成された硫化物と酢酸を栄養源とすることのできる糸状性硫黄細菌Type 021Nの増殖に有利なるものと考えられた。一方、嫌気部におけるりんの放出量が少ない場合にバルキングが起こる傾向があったが、好気部に持ち込まれる有機物濃度とバルキングには相関がなく、Poly-P蓄積菌とType 021Nが有機物をめぐる競合関係にあるとは考えられなかった。 以上のことから、活性汚泥中の硫酸塩還元菌とType 021Nは共生関係にあり、硫酸塩還元がバルキングの一因となっていると考えられた。
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