研究概要 |
8月と12月の2回、硝酸態窒素濃度が比較的高く、農業活動の影響が顕著であると考えられる地域において浅層地下水40サンプル中農薬濃度を測定した。分析では試料水2000mlをジクロロメタン3mlに固相抽出し、抽出液をGC-MSを用いて測定した。調査項目は1992年度農薬要覧からピックアップした京都府で多く使用されている農薬20種と、K市郊外の農家で使用されている農薬11種の計31種の農薬である。分析の結果、今回調査した農薬は全て検出限界以下であり、農薬による地下水汚染は調査を行った地域・時期においては観察されなかった。しかし、本研究を行った年が例年に比べ異常に降雨が多かったため、河川への表面流出が多く、農薬の地下への浸透量が少なかった可能性があること、分析対象を農薬原体のみとし分解生成物等については考慮していなかったことなどから、今回の調査結果から農薬が地下水中へ浸透している可能性を完全に否定することはできない。 上記調査と同時にプラスチック添加剤による地下水汚染調査も行った。調査項目は代表的可塑剤であるDEHPとDBP、および酸化防止剤であるBHTとBis-phenolAであり、分析条件は農薬測定時と同一である。分析の結果8月の調査では4物質ともほとんどの地下水サンプルから検出され、4物質の内要監視項目として水環境基準値が存在するDEHPについては、10サンプルで基準値を超過した。これらの物質の濃度は人口密集地において高濃度となる傾向を見せていた。これに対し、12月の調査ではDEHPが半分ほどのサンプルから検出された以外ではBHTが2地点でごく低濃度で検出されてのみでDBP,Bis-phenolAは全く検出されなかった。実験室で、軟質塩化ビニルについていくつかの水温における溶出試験を行い、添加剤や酸化防止剤が水温が高い時に多く溶出することを確認した。この性質が8月と12月での地下水中プラスチック添加剤濃度の違いとなって現れていると考えられる。
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