申請者らがこれまで行ったアンケート調査および実地調査で得られた使用限界状態を想定する積載荷重データ(事務所、集合住宅、商業施設、電算室、駐車場)について、未整理データのコンピュータへの入力および再整理を行った。次に、各用途対象で共通の手法による解析が可能となるよう解析プログラム(申請者らが開発したもの)の改訂を行った。その際、以前より精度について問題点が指摘されていた差分法による床版用等価等分布荷重(荷重効果)解析プログラムに対して、要素分割が計算結果に与える影響についての検証を行った。その結果、これまでの要素分割でほぼ妥当な計算結果を得られるものの、データによっては誤差が大きくなることがわかった。計算機(東京大学大型計算機センター所有・日立製作所製スーパーコンピュータS-3800/480)の計算速度および記憶容量がプログラム作成時と比較して飛躍的に強化されたためこの検証が可能となったが、計算時間および金銭的な問題から、今後の解析において全てのデータで十分な精度を得ることは難しく、更にプログラムを改良する必要があると考えられる。荷重強度のモデル化に関しては、逆ガウス型分布を用いた確率分布モデルを提案した。逆ガウス型分布は、分散が小さい場合、現在荷重モデルとしてよく用いられている対数正規分布と極めて類似した分布性状を示し、定義域も同様に正の範囲である。また、再生性を有するので、対数正規分布では近似的に成立するとみなしていた確率変数の和が理論的にも成立する。更に、累積分布関数が誤差関数により表現できるので計算機上での使用性に優れているといった利点がある。今後積載荷重だけでなく、他の荷重の評価および構造物の信頼性解析においても有効な手段となることが期待される。
|