床吹出し空調システムは、換気効率の向上、空調のパーソナル化が可能である点などの利点が指摘されている。しかし、吹出し温度、風量、オフィスレイアウトによっては、居住域において上下温度分布、ドラフトが生じる可能性がある。本研究では、床吹出し空調システムを用いたオフィスにおいて、着衣や吹出し口の形状、熱負荷、風量などが熱的快適性に与える影響について明らかにすることを目的とした。 実験はお茶の水女子大学のオフィス環境実験室にて行った。はじめに異なる5種類の吹出し口を用いて気流分布と上下温度分布を測定した。その結果から、気流特性の異なる4種の吹出し口を取り上げ、熱負荷、風量を変化させて、上下温度分布、ユニット吹出し温度、レタン吸込み温度などを測定した。さらにサーマルマネキンを用い、着衣を変化させて、サーマルマネキンの熱損失、皮膚温などを測定し、等価温度を求め、熱的快適性について、評価した。第1実験においては、気流分布、上下温度分布共に、ファン付きの吹出し口とプレッシャー式の吹出し口の間に差が見られ、ファン付きの吹出し口の方が気流の立ち上がりがよく、風速0.25m/s以上の範囲も広かった。そのため、上下温度差がファン付きの吹出し口の方が小さくなっていた。また、個々の吹出し口についても差は見られ、同じプレッシャー式の吹出し口でもA社大は他の2つとは異なった気流分布を示した。第2実験では、さらに詳しい上下温度分布特性が明らかとなり、吹出し口の近くでは上下温度分布は吹出し温度、気流特性差の影響を強く受け、ファン付きの吹出し口とプレッシャー式の吹出し口での温度分布の差が大きく、プレッシャー式の方が上下温度差がかなり大きくなるが、吹出し口から離れた場所では両者の差は小さくなる事が分かった。等価温度の算出によって、着衣の与える影響が明らかとなり、スカート着用時には、ズボン着用時と比較して、下半身においては等価温度がかなり低い値を示していた。熱負荷は、上下温度分布にはかなり影響を与えるが、等価温度にはあまり影響を与えていなかった。風量も等価温度には影響を与えていなかった。
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