本調査研究は、肢体不自由者の移動能力を独立歩行群・自立歩行群・車椅子自立群・車椅子介助群に分けて、独立歩行群から車椅子介助群まで順々にそれぞれにおける住要求の共通点と相違点を分析し、その住要求を満たす環境整備のあり方を探るための基礎的資料を得ることを目的としている。調査は郵送によるアンケート調査で、405名の肢体不自由者を対象とし外出行動と住まい方について分析した。 その結果、(1)歩行可能者は約7割で車椅子使用者より多く、全国的にも「歩ける」肢体不自由者が多いことがいえる。(2)外出時には7割以上が躊躇しており、その理由として心理的な問題が注目すべき点で具体的には横断歩道上の問題や人混みでの精神的疲労が多くいずれも歩行可能者の方が高い値を示した。(3)住まい方では玄関部分など外出に関わる内容の住宅改造は実際には改造率は低いがニーズは高く、また来客時において車椅子介助群は6割以上が不都合を感じていることが解った。 本報では、肢体不自由者をその移動・移乗能力から4群に分けてその住要求を分析し、健常者〜独立歩行群〜自立歩行群〜車椅子自立群〜車椅子介助群と順々に共通するニーズと異なるニーズとを把握することの有用性を確認した。今後、さらにノーマライゼーション理念に基づいた住環境整備の重要性が高まると考えられ、肢体不自由者=車椅子というイメージを見直し、健常者に近いと考えられる独立歩行群など『歩ける』肢体不自由者の存在も認識した住環境づくりが必要となる。
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