本研究は、建築物群に囲まれた空地(オープンスペース)における環境基準を検討するための基礎的研究として、空地内部の日照環境、採光環境及び開放性に関する調査を下記の通り行なった。環境評価指標として、天空率、天空比、日射量を用いた分析・調査を行ない、以下の成果を得ることができた。 1.空地タイプごとの形態特性と環境との関係に関する分析 東京都における総合設計制度等で計画された公開空地の実態調査を行ない、中庭型空地を含む複数の空地タイプごとに、周辺の建築物の形状、配置、方位と空地地面上の日射量分布との関係をシュミレーションにより検討した。結果として、空地モデルごとの容積率、空地率、街区の方位ごとの形態特性と直達日射量を考慮にいれた日照環境との関係を示す基礎データが得られた。 住宅団地における空地の開放性環境に関する調査 調査対象とした住宅団地において、公園、広場等の空地に対し、魚眼レンズを用いた現地天空率、天空比等の調査により、各空地の環境指標値を測定した。その後、各空地において被験者による感覚尺度をアンケート調査し、環境指標値と開放感等の感覚との相関を調べた。その結果、囲み型空地における閉鎖性や快適感は、天空写真より得られる天空率に空地を取り囲む建築壁面の幅等を考慮にいれた指標値と相関が高く、その指標値(ここでは視感天空率と呼ぶ)により、説明できることを示した。 本研究は、空地の環境評価に関する一連の研究の内、日照、採光、開放性に限定した上記指標値をモデル的に求めるシュミレーション手法の作成、実測方法の構築、更に心理値との相関を調査した作業をもとに、調査結果を建築物に囲まれた空地の環境性能を評価する基礎資料としてまとめた。
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