研究概要 |
本研究は,看板の総量的な規制誘導をおこなうことを目的としているが,看板の見え方と実際の看板量との関係が曖昧なため,その規制の基準を確定できないが現状である。そこで我々は,3次元コンピュータグラフィクスの技術を用い,設置された看板の量と視覚的な看板量の関係を定量的に分析した。まず調査をおこない,看板を看板形状・サイズ・取付け位置・建築物ファサードに対する看板に割合等の基準により,70パターンに分類した。つぎに各パターンの看板を設置した単純なシミュレーション街路を作成し,その街路上を移動した場合の看板視率(視野全体における看板の割合)を算出した。計算結果として,上記の類型項目と看板視率の関係をまとめると,移動に伴う看板視率のデータは,看板形状によって傾向が2分化される。その値や移動に伴う変化は,縦看板が横看板より大きく,縦看板の方が,視覚における影響が大きいことが伺える。また他の類型項目も,やはり看板視率の値に対し影響度が大きいが,それら値の変化を左右するものが,視点と看板との物理的な距離であり,道路幅員との関係が大きいものと考えられる。次に実際の景観にこの計算を応用した。街区は大分市の商業地区,歓楽地区,業務地区の代表的街路を選定し,看板視率を計算した。結果として,道路中央部を移動した看板視率は,歓楽地区が6.54%,商業地区2.72%,業務地区は2.19%という値を得ることができた。歓楽地区は道路幅員が狭くかつ看板の絶対量も多いことから,極端に大きい結果となったことが伺える。業務地区では,看板が非常に大きいが,道路幅員が広いことより,看板視率は小さくなったと考えられる。最後にこの3種の現状地区において看板パターンのシミュレーション,及び、評価実験をおこなったが,正確を期すため研究を継続中である。しかし,現在までの分析で,看板視率を道路幅員との密接な関係を見出すことができた。
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