人間が都市空間の中で経路を選択しながら目的地へと移動するプロセスである経路探索について、状況に埋め込まれた行為(situated action)と捉える状況論的な考え方から分析するための基礎的研究を行った。 経路探索の状況に関して、まず人間と都市空間との関係の緊張度によって分類し、緊張の高い「避難」と、低い「散策」の状況を区別し、それらに対して日常的状況を区別する。日常的状況については、さらに人間が都市空間に対して示す習熟度の高い順に、「通い」、「探索」、「探査」と区別することとする。 この分類に従って、日常的状況について過去に行ってきた経路探索実験にもとづくプロトコル分析の方法を厳密にした、これによって、迷いと発見を含んだ問題解決としての経路探索の特徴を、浅いプランニング、豊富な情報が外部から獲得できること、とりあえず行動によって状況が打開されること、語られないプロセスが多くあることが、明確に指摘された。 当初予定した、状況ごとに被験者が様々な役割を演じる実験は実行することはできなかった。しかし、多様に設定することの可能な役割にもとづいて行う実験に関して、どのような視点から評価するべきかを次のように明確化することができた。 1)迷いと発見はどのような場所で生じるか、2)行動のプラン作成はどのようになされるか、3)どんな情報によって確認するか、4)どのようなとりあえず行動を利用するか、5)どのような内容を発言するか、あるいは逆にどのような内容は発言しないか。 これらの評価基準にたって、役割演技の経路探索実験を組織することではじめて、都市空間の評価手法に適用可能な知見を引き出すことができるものと思われる。同時にこれらの基準は、すでに行ってきた経路探索についての計算論的モデルの評価に利用できる。
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