わが国におけるアメニティの確立をめざす住民組織(シビックトラスト)の実態は、その組織の活動に波があり定着性に欠けるために把握がきわめて困難である。したがって、今回の調査研究も全国町並み保存連盟や兵庫町並みゼミ実行委員会などの組織間のネットワークによってリスト化されている組織を主な対象とし実施した。また、このような組織のない地域の住民の景観や環境に対する意識に関しても調査を実施し、シビックトラスト的な組織の必要性についても考察した。得られた知見は、次のようなものである。 1.景観やまちづくりなどに関する行政の施策が整いつつあるなかで、施策を求める活動から脱皮していない組織は停滞している。行政の施策への連携や監視、新たな方策の提案などの新たな活動目標が必要になっている。 2.住民組織が公的に担保され、活動費などが助成されている場合もあるが、その多くは従来の自治会組織と重複していることが多い。したがって、活動内容は行政に追随的であり、施策に対する充分な判断力を有しているとはいいがたい。 3.各地域のアメニティの確立をはかるための財政制度は未整備のままであり、住民組織が独立に公共的な事業を展開することはきわめて困難である。環境に関する基金や信託などが構築しやすいように、民間からの資金を集めやすくするための税制などの転換が必要である。
|