研究概要 |
遷移金属ダイカルコゲナイドMX_2(X=S,Se,Te)の多くは層状構造を持ち、電荷密度波、インターカレーション化合物の生成など数多くの興味を提起し、今日迄広く研究がなされてきた。一方、その非晶質化合物は、電気化学的性能や触媒作用が、結晶状態よりも優れた特性を有することで注目されているが、その原子構造解析や物性データの蓄積は未だ十分なされていない。本研究では、沈殿法により合成した非晶質白金硫化物(Pt_<1-X>S_2)の局所的な原子構造をX線異常散乱法(AXS)を用いて調べ、、結晶構造と比較し、電気化学的特性との関係を検討した。試料はH_2PtCl_6水溶液にH_2Sガスを吹き込むことにより合成した。この試料について高エネルギー物理学研究所の放射光X線源を利用し、PtのL_<III>吸収端(11.562keV)の30及び300eV低エネルギー側のX線を用いて散乱測定を行った。散乱強度のエネルギー依存性からPt周囲の環境干渉関数求め、フーリエ変換によりPtの環境動径分布関数を得た。これとMo Kalpha線を用いて得られた全動径分布関数と比較することによって、CdI_2構造型PtS_2における八面体ユニット(PtS_6)を基本構造としたランダム連結モデルを想定し、最小自乗法を用いて干渉関数にフィッティングを行うことで原子間距離および配位数の精密化を行った。精密化された構造パラメターから非晶質硫化白金の組成はPt過少であって、熱重量分析から算出された組成および密度と一致し、Pt過少による空孔体積の増加、つまり微視的な表面積の増加により電気化学的活性が高められていることが分かった。
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