研究概要 |
結晶性材料の破壊においては、原子レベル,メゾスケール,mumオーダのステージを経て最終的な巨視的破壊に到る。等方弾性理論によればこれらは長さの1/2乗でスケーリングされ統一的に扱えるが、実際の物質においてはこの扱いでは不十分であり、各ステージの特徴およびこれらステージ間の関連を解明することが重要である。 本研究においては透過型電子顕微鏡により原子レベル〜mumオーダの破壊の過程の観察を行い、この実験結果を連続体モデルおよび離散原子モデルにおける計算機シミュレーションと比較した。 (1)Molecular Statics法により計算された原子レベルでのき裂周りの歪場は等方弾性論より予想されるそれと非常に良く一致した。結合の異方性および非線型性による効果はほとんど無視できる要素であった。ただし、破壊応力直下の状態ではき裂最先端の数原子距離の領域のみで顕著な差異が現われる。15EA04:(2)等方弾性モデルでのき裂周りの歪場(モードI)を使って、Wowie-Whelan方程式に従ってbend contourのコントラスト像を計算し、MgOおける透過型電子顕微鏡観察結果と比較した。後者においては(010)面クラック前方にbend contourが観察されたのに対して、計算像ではクラック面の上下に異常が現われた。このことは、観察した視野がモードIIもしくはIIIの破壊により生成され、bend contourの像の特徴から破壊のモードおよびクラック周りの歪場に関する情報が得られることを示唆する。
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