高度経済成長にともない大量に建設されたコンクリート建造物の老朽化が進み、改修工事や解体で不可避的に排出されるコンクリート廃材の処理が大きな社会問題となっている。本研究は、粉砕したコンクリート廃材を水熱ホットプレス法を用いて固形化することにより構造材料として再利用する技術開発を行うものである。水熱ホットプレス法は、材料粉末を水熱条件下で機械的にプレスすることにより固化体を作成する方法であり、本手法によれば従来焼結法など他の方法では反応せず固形化できなかったコンクリート廃材を低温で固化させることが可能である。 はじめに、水熱ホットプレスによる廃コンクリート固化体の製造条件を明らかにした。材料はコンクリート廃材を粉砕した粉末である。水熱ホットプレイの実験には、本申請により作製する水熱ホットプレス・オートクレーブを用い、既存設備である荷重付加装置によりプレスして行った。本実験によりコンクリート廃材から固化体を合成する条件が明らかとなり、さらにSEM 観察、X線解析により合成時の固化反応機構を明らかとした。すなわち、コンクリート廃材の固化反応においては、水熱反応によりトバモライトの結晶が生成することにより強度が向上する。また、最適合条件においては通常のコンクリートに比べて約2倍の強度を有する固化体を合成することができた。さらに、トバモライト結晶の生成温度を越えて反応温度を高くするとゾノトライト結晶が生成することが明らかとなった。以上の基礎的知見踏まえてコンクリート廃材とガラスの複合体の合成を行った。種々のコンクリート廃材/ガラス複合比について合成条件を明らかにした。硝子を配合することにより通常のコンクリートに比べて約3倍程度の強度が得られることが明らかとなった。この強度の増大は、配合されたガラスが水熱反応により結合したためである。また、得られた固化体はガラス配合によりコンクリート廃材のみの固化体に比べて表面に光沢を有しており新しい材料として利用できると考えられる。以上の検討によりコンクリート廃材の有効利用が可能となった。
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