研究概要 |
当該年度ではCVD法により作成したGa_2Se_3について1)電子回折・高分解能電子顕微鏡法によって空孔規則相の空間群と大まかな結晶構造の決定を行い,2)粉末X線回折法特にリ-トベルト解析により格子定数と原子位置の精密化を行い,結晶構造の決定を行った.続いて空孔規則相および不規則相について透過光吸収係数の波長依存性並びに規則相に対しては結晶方位依存性を測定した. その結果,空孔規則相の結晶構造は従来X線回析法で推定されていた2つのモデルのうちの1つに類似していたが,そのいずれとも異なっており,本研究で採用した電子回折・高分解能電子顕微鏡法とX線リ-トベルト解析の併用はきわめて有効であった.最終的な結果は,空間群P1,格子定数a=6.710,b=6.707,c=6.650A,alpha=99.20beta=99.24,gamma=120.50の三斜晶で,基本となる閃亜鉛鉱型構造の[112]方向に構造空孔はジグザグ状に配列するものであった. それに対し,空孔不規則相は格子定数a=5.43(5)Aの立方晶であり,規則相と比べ3%程大きな単位胞体積を示した.空孔の規則-不規則変態温度Tcは633℃であったがこの相変化はきわめてゆっくりであり,規則度の高い試料を得るには600℃,30日の熱処理を必要とした.Tcより100℃くらい上までの温度範囲で回折図形に散漫散乱が観察され,構造空孔は短範囲規則状態にあるものと推定された. 不規則相は赤黒く,規則相はオレンジ色を呈した.空孔の規則配列にともないバンド構造に変化が生じ,吸収特性が変化したものと思われる.粉末試料による透過光吸収係数の波長依存性測定では500〜600nmにわたり吸収係数が大きく異なっていた.またこれと対応して,単結晶と偏光を用いた吸収係数の測定では525nm付近で透過吸収係数の差が2x10^4にもおよび,規則化にともない光学的特牲に結晶方位異方性が現われることが判明した.
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