軽量耐熱材料として期待されている(gamma+alpha_2)二相層状TiAiの破壊挙動について、FZ法にて層状組織を方向制御したTiA1-PST結晶を用いることにより、微細組織、結晶方位異方性に注目した系統的な研究を行った。PST結晶における層間隔、ドメイン径といった微細組織はA1濃度を変化させることで制御可能である。したがって、本研究では、Ti-49.1at%A1、Ti-50.8at%A1合金を用いることで、層間隔をそれぞれ0.75mum、1.13mum、gammaドメイン径をそれぞれ23mum、64mumに制御したTiA1-PST結晶を作製した。さらに、層界面とノッチとの方位関係が異なる3タイプの試験片についてCT試験を行った。その結果、PST結晶の破壊挙動は主亀裂の伝播方向と層界面とのなす角度関係に強く依存し、特に層界面に対し平行方向に主亀裂が進展する場合(Type A)、層界面を横切る場合(Type B)に比べ、5倍も高い靱性値(K_Q)を示した。このことは層界面における主亀裂のブランチングならびにリフレクションが主亀裂伝播の障害となるためであり、層状組織の方向制御による強靱化の可能性を示唆している。また、低靱性を示すTypeAにおいては、破壊試験後の詳細な組織観察ならびにSEM-ECP法により、主亀裂の伝播は主にalpha_2相の(0001)上でのへき開により進行することが明らかとなった。さらに、微細組織が破壊挙動におよぼす効果は顕著であり、TypeAでは、alpha_2相間隔の微細化が、Type Bでは、層間隔の微細化が強靱化にとって極めて有効であった。このことは、AE波測定の結果とあわせて、微細組織ならびにその異方性が、主亀裂の発生、伝播そして破壊に至るまでの過程に対し密接な相関関係によって作用していることを示唆している。したがって、破壊靱性向上のためには微細組織の制御ならびにalpha_2相における変形モードの改善といった立場からの合金設計が不可欠である。
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