本研究は厚板鋼板の切断を対象としたエア・プラズマアーク切断用電極の中電流域(250A)までの電極消耗に及ぼす作動ガスの影響を開発したルテニウム(Ru)-酸化イットリウム(Y_2O_3)系、イリジウム(Ir)-Y_2O_3系電極と従来のハフニウム(Hf)電極を用いて比較検討した。作動ガスに純酸素と圧縮空気を用いて、アーク電流を100Aから250Aまで段階的に変化させ、連続的にアーク放電を発生させる連続点弧消耗試験とアーク放電をON/OFFする多数回点弧消耗試験を行った。得られた結果を要約すると以下のようになる。 1.作動ガスが純酸素の場合にはRu-Y_2O_3電極は150A付近で電極材料が溶融損耗したのに対してHf電極とIr-Y_2O_3電極は250Aまでは溶融損耗することなく、銅シースに装填した電極材料のみの消耗形態を示した。 2.作動ガスが圧縮空気の場合にはRu-Y_2O_3電極とHf電極は250Aまでは電極材料のみの消耗形態を示したのに対してIr-Y_2O_3電極は250Aでは溶融した。そして作動ガスが圧縮空気の場合に比べて純酸素の場合の方が電極消耗が増大したのは酸化反応によるの陰極への入熱が増大したためと思われる。 3.全ての電極において多数回点弧時の消耗は連続点弧時の消耗に比べて大きかった。これは放電開始時の陰極表面に生成した酸化物の破壊によるものと考えられる。アーク電流が100〜150Aにおいてアーク放電の繰り返し回数の増加に伴ってRu-Y_2O_3電極はHF電極に比べて消耗量は減少した。これは陰極表面の酸化物の性状の違いに起因するものと考えられる。 以上、エア・プラズマアーク切断用電極の消耗に及ぼす作動ガスの影響を実験的に検討した。今後は陰極表面とプラズマとの化学反応を考慮した消耗モデルの検討を行う予定である。
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