材料除去加工を中心にして、レーザ加工技術が産業界に広まりつつあるが、基本的なビームと物質間の相互作用現象や、材料の熱的・光学的性質は系統的に全く解明されていないのが実状である。それゆえ、レーザ加工技術は期待されているポテンシャルに比べてはるかに未成熟な段階にある。 本研究では、パルス幅8ns、最大エネルギー900mJのパルスYAGレーザをアルミ合金に照射し、材料除去加工を行った。その際の材料表面における物理的変化を、超高速度シャドウグラフにより観察した。フィルム露光用の光源には、エキシマ励起の色素レーザを使用した。同時にマルチチャンネル分光器により、誘起プラズマの発光分析を行った。またレーザ誘起プルームに対して水平にHe-Neプローブレーザを導入し、プローブレーザの減衰信号の観察も行った。 エネルギー密度の増加とともに、材料表面には、溶融の程度が進んだとみられる照射痕が観察された。10^6J/m^2以上の非常にエネルギー密度の高い領域では、試料表面のダメ-ジの様子は、より流動性の高い溶融地から凝固したように見えた。また無数の小さな穴が認められ、かなり激しく蒸発や飛散が生じていることをうかがわせた。 レーザ照射により誘起されたプルームの発光スペクトルを測定したところ、中性原子線とイオン線との発光が検出された。これらの発光強度はエネルギー密度の増加とともに大きくなった。このことから、蒸発物質は一部イオン化しているものと考えられる。この蒸気フロントの上昇速度を、He-Neプローブレーザの減衰信号から算出したところ、約1000m/sという音速を超えた値を得た。このことより、加工上部には衝撃波が発生しているものと考えられた。そしてこれはシャドウグラフにより確認することができた。
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