銅合金鋳型へ耐摩耗性向上のために溶射したNi自溶合金皮膜の再溶融処理を行わずに密着強度を改善する方法について検討した。銅合金を基材として、Niを無電解メッキしその表面にNi自溶合金をHVOF溶射した。真空中で450℃〜750℃の拡散熱処理を行い、熱処理による密着強度の変化および溶射皮膜界面の元素濃度分布を調べた。 引張による密着強度の評価においては、550℃までの熱処理をした試料は皮膜内部で破断し、750℃の熱処理をした試料では皮膜界面から剥離したが、若干皮膜内部で破断した部分もあり、密着強度をより正確に評価することができなかった。 熱衝撃試験による密着強度の評価においては、450℃×12Hrの熱処理により、溶射まゝと比較してクラック発生サイクル数(寿命)が2〜3倍になり、密着強度が向上することが分かった。 溶射皮膜界面の元素濃度分布は、550℃までの熱処理では、線分析の結果から明らかな拡散はみとめられなかった。650℃、750℃の熱処理をすると組成像および線分析の結果から拡散層が認められた。密着強度の向上は、結合層(Niメッキ)の基材および溶射皮膜への相互拡散によるものと考えられるので、低温の拡散熱処理においても線分析結果に現れないレベルで拡散が起こっており、そのレベルでの拡散でも数倍密着強度が向上すると考えられる。
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