高融点酸化物バルク単結晶を作成する際の、結晶成長特性に及ぼす結晶及び融液を通しての輻射伝熱(内部輻射)の影響を明らかにするために、タンタル酸リチウム単結晶(融点:1650℃)を引き上げ法により、異なる雰囲気中で作成した。純窒素中で作成した結晶は、結晶内酸素欠陥のため茶色に着色し、結晶作成中に結晶の曲がりや結晶の融液からの離脱が起こり、長尺結晶の作成は困難であった。しかし、雰囲気内に微量(0.5vol%)の酸素を混入させると、結晶内の酸素欠損はほとんど無く、黄色みがかった透明な結晶となり、純窒素雰囲気の場合と同一の結晶成長条件で長尺結晶を容易に作成することができた。また融液内対流の様子も雰囲気で異なり、純窒素雰囲気中では融液内対流の存在が確認されたのに対し、雰囲気に酸素を含む場合には融液は極めて穏やかであり、対流は抑制されていた。炉内の温度勾配を測定したところ、両雰囲気における温度勾配に差異は認められなかった。次に結晶作成中にるつぼ、融液、結晶から放出される光の輝度を測定したところ、るいぼから放出される光の強度は両雰囲気において同一であったのに対し、結晶から放出される光の強度は酸素を含む雰囲気中の方が純窒素中における光強度より大きかった。即ち、雰囲気に酸素を含む場合には、結晶が透明であるため、内部輻射による伝熱が大きく、そのため結晶/融液界面付近で大きな温度勾配を保てるのに対し、純窒素雰囲気中の結晶は着色により光吸収が生じ、界面から結晶上部への伝熱が阻害され、そのため結晶成長中に界面付近の温度が上昇し、正常な結晶成長が進行しえないためであると結論できた。 融液内対流に及ぼす内部輻射(あるいは雰囲気)の影響に関しては現在不明な点が多く、今後も引き続き研究を行う予定である。
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