研究概要 |
気相重合法によるポリマー粉体の製造プロセスの設計や運転においては粉体状ポリマー中へのモノマー蒸気の溶解度の情報が不可欠である。本研究では圧力降下法により粉体状ポリプロピレン中へのプロピレン蒸気の溶解度を測定した。ポリマー試料には粒系及び結晶化度の異なる3種類の試料を用いた。 1.測定結果 温度50゚C及び75゚C,プロピレンの飽和蒸気圧までの圧力範囲で測定を行った。なお、圧力降下法ではモノマー蒸気の溶解によるポリマーの体積変化の情報が必要なため、別の測定装置によってポリプロピレンの膨潤度を測定し、溶解度の測定値を補正した。どの試料においても低圧領域では溶解度は圧力と共にほぼ直線的に増加し、飽和蒸気圧に近づくと溶解度が増加する方向に曲線の傾きが変化した。また、温度が低い方が溶解度が高くなった。結晶化度が同じ試料では粉径による溶解度の変化は見られなかったが、結晶化度が異なる試料では結晶化度が低い方が溶解度が高くなった。結晶部分にはモノマー蒸気は溶解しないと仮定して非晶部分への溶解度を検討したところ、両ポリマーでの溶解度の差は小さくなったが一致はしなかった。従って、ポリマーの1次構造が異なるために溶解度が異なったと考えられる。 2.状態方程式による相関 空孔理論に基づく状態方程式を開発し、測定値の相関を試みた。本状態方程式では各純物質に対して3つのパラメータが必要であり、プロピレンに対しては飽和蒸気圧の文献値を相関することによって決定した。また、ポリプロピレンに対しては当研究室で測定した高温高圧下でのPVT関係を相関することによって決定した。溶解度の測定結果に対して2成分系相互作用パラメータをフィッティングパラメータとして相関を行ったところ各温度の測定結果を良好に相関することができた。
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