硫黄酸化物(SO_x)は、硫黄を含んだ燃料の燃焼過程で生じる大気汚染成分の1つであり、大量の排煙ガス中に含まれるppmオーダーのSO_xの除去が必要とされる。本研究では、排煙脱硫用吸着剤としてのゼオライトの可能性について検討するための第一段階として、イオン交換による改質を行ったゼオライト上での、SO_xの吸着状態や吸着表面の状態を、赤外スペクトルなどの分光学的手法で解析し、SO_x分子と吸着媒表面との相互作用を分子レベルで明らかにすることを試みた。 SO_2を吸着質とし、吸着剤としては耐酸性・耐熱性の高いZSM-5を用いた。まず、SO_2と細孔内カチオンのマクロな相互作用について検討するため273K〜594Kの範囲で、SO_2の吸着等温線や吸着熱の測定を行った。その結果、種々のアルカリ金属イオンで交換されたZSM-5においては、550K、67kPaの条件下で10ml/gSTP以上のSO_2吸着量が認められ、特にLiZSM-5では594Kでも67kPaで20ml/gSTPもの吸着量があることが示された。また、吸着等温線の低圧領域での立ち上がりが鋭く、希薄なSO_2の吸着に適していることがわかった。この吸着は可逆性が比較的大きく、不可逆吸着量はLiASM-5の594Kでは全吸着量の5%程度であった。 吸着量の少ない領域におけるSO_2の赤外スペクトルを室温下で測定したところ、SO_2の逆対象伸縮振動が1361cm^<-1>付近に観測され、吸着によって強く摂動を受けているが分子状で吸着していることがわかった。この吸収帯は2つのピークから構成されており、カチオンサイト上でのSO_2の2つの吸着配向によって生じていることが示唆された。 吸着操作後のZSM-5をX線回析によって分析したが、結晶構造の破壊を示す結果が示されなかったことより、本吸着条件下でZSM-5吸着剤がSO_2に対して高い耐性を有していることがわかった。
|