研究概要 |
本年度は構成元素の一部を遷移金属に置換したヘテロポリ化合物による、tert-ブチルヒドロペルオキシド(以下、TBHP)を酸化剤とするシクロヘキサン(以下、CH)の液相均一酸化反応と対カチオンをCsで部分置換したモリブドバナドリン酸によるイソ酪酸(IBA)の酸化的脱水素反応を行なった。 (1)CHの均一酸化反応;陽イオン交換法によってK_nSiW_<11>MO_<39>(M=Fe^<3+>,Co^<2+>,Ru^<3+>,Rh^<3+>)から(C_6H_<13>)_4N^+,(C_4H_9)_4N^+塩を調整し、触媒として用いた。60℃の反応でM=Fe,Co系に比べるとM=Ru,Rh系の方がシクロヘキサノンの選択性が高く、第4、5周期遷移金属間で活性に違いが見られた。酸化生成物の生成速度はRu>Rh>Fe=Coの順に、TBHPの減少速度はRu=Rh>Fe=Coの順になった。以上のように、TBHPを酸化剤としたCHの液相均一酸化にRu,Rh混合配位ヘテロポリ化合物が有効であることが示された。 (2)IBAの脱水素反応;Mo、V混合配位ヘテロポリ酸とそのCs部分置換塩(Cs_nH_<3+x-n>PMo_<12-x>V_xO_<40>、以下CsnMo12-xVx)を用いてイソ酪酸の酸化的脱水素反応を350℃で行なったところ、V置換により酸型では活性が低下し、MAA選択性の変化は小さかったが、熱的に安定名Cs2.75塩では活性はV1>V2>V0、MAA選択性はV1≧V2>V0となり、顕著なV置換効果が得られた。Cs2.75Mo11Vで活性(98%)、メタクリル酸(MAA)選択性とも(77%)最大になった。これは報告のあるヘテロポリ化合物中では最高の成績である。
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