研究概要 |
高効率な石炭転換技術の開発には、石炭中の非共有結合を常温〜200℃の低エネルギーで改質し架橋形成を抑制すれば、より効率的な石炭転換プロセスの確立が可能なことが示唆されており、石炭構造及びその架橋形成反応を定量的に評価することが重要である。そこで、本研究ではまず、膨潤溶剤をプルーブにするという着想に基づき、石炭の溶剤膨潤時,脱離時の重量,体積,熱的経時変化を連続的に測定し、溶剤によって切断された非共有結合の数とエンタルピー収支から算出した非共有結合切断に伴う熱量を求め、石炭中の非共有結合強度分布を評価する方法を確立した。この結果、低品位炭の非共有結合は約20kJ/mol付近にピークがある強度分布をもっていることがわかった。 次に原炭及び上述の方法で蒸気膨潤し架橋点(=非共有結合部位)をキャッピングした試料をCPP-MSによって迅速に低温熱分解し、そのCO,CO2,H2O生成速度の比較から、石炭の架橋形成速度と非共有結合の強度分布の関係を定量的に評価する方法を提出した。これに基づいて、石炭の熱分解中に形成していく架橋の種類とその速度を定量した結果、300〜500℃で無機ガスの生成すとともに石炭の熱分解活性が大きく低下していくこと、転化率、タール収率を向上するには、この低温での架橋形成反応を抑制することが重要であることが明らかになった。 これらの知見に基づき、低温での架橋形成速度を抑制し外部からの水素化速度を促進する新熱分解法として、極性溶剤蒸気及び水素供与性溶剤での膨潤した石炭の迅速熱分解を試み、転化率、タール収率をこれまでの約2.3倍まで飛躍的に増加させることに成功した。
|