研究概要 |
ナフタレンのプロピレンによるアルキル化での生成物分布の熱力学的組成を明らかにするために形状選択性が発現しないシリカアルミナ触媒を用いて反応を行ったところ、反応初期には配向性によりalpha-位に置換基を有する異性体が多く生成するが、熱学的にはbeta-位に置換基を有する異性体の方が安定であるため、ナフタレン転化率が増加すると異性化により2-IPN(イソプロピルナフタレン)、2,6-および2,7-DIPN(ジイソプロピルナフタレン)の選択率が向上することが示された。しかし熱学的には2,6-DIPNと2,7-DIPNがほぼ等しい選択率でしか得られないことが明かとなった。 モルデナイト触媒を用いてナフタレンのプロピレンによるアルキル化反応を行うと、反応初期から分子径の小さい2-IPN、2,6-および2,7-DIPNが高い選択率で生成し、形状選択性が発現していることが示された。しかも2,6-DIPNの選択性はシリカ・アルミナ比の増加とともに向上することが明かとなった。XPS測定の結果より、シリカ・アルミナ比の高いモルデナイト触媒ほど外表面酸点の反応への寄与が小さくなることが示唆された。このことより、モルデナイト触媒の細孔内では2,7-DIPNよりも2,6-DIPNが選択的に生成すると結論した。 モルデナイト触媒が2,6-DIPNの生成に高い選択性を示す原因を明らかにするために、2-IPNの不均化およびプロピレンによるアルキル化を行い、生成物分布を比較したところ、反応初期の2,6-DIPNの選択性には相違は見られなかった。またDIPN混合物の吸着実験を行ったところ、2,7-DIPNに比べて2,6-DIPNが選択的に吸着することが示された。 以上のことより、モルデナイト触媒で2,7-DIPNよりも2,6-DIPNが選択的に生成するのは、拡散速度の違いによる生成物規制のためであると結論した。
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