研究概要 |
本研究では,有用物質を細胞外に漏出回収する連続生産型バイオリアクターの開発を目的とし培地循環型バイオリアクターを用い,種々の条件下で赤ビ-ト毛状根を培養し以下の知見を得た送液ポンプは,本リアクターにおいて培地を循環するために購入した. 1.培地循環型バイオリアクターは,増殖カラムと酸素富化槽からなり,増殖カラム内では毛状根を固定しカラム内の入口から出口方向に培養液を流すことによって増殖させる.一方,酸素富化槽では,空気を通気し攪拌することで槽内部における培養液の溶存酸素を,一定に保ちカラム内に供給する.本バイオリアクターを用いカラム内空塔速度を種々変化させ培養を行なったところ空塔速度の上昇とともに細胞増殖速度が向上した.さらに,カラム内での酸素移動の解析により培養液(液)と毛状根(固)間に存在する境膜で酸素移動律速となり細胞増殖が支配されていることが明らかになった. 2.培地循環型バイオリアクターで高密度培養を行なった際にも,増殖カラム内において毛状根の酸素摂取により溶存酸素の濃度勾配が生じ,カラム内培養液入口では溶存酸素が十分に存在するため細胞増殖が行われ,培養液出口付近では溶存酸素がゼロ(酸素飢餓状態)となり色素を細胞内から連続的に漏出することを見出した.さらに,高分子吸着樹脂を用いた本リアクター中の漏出色素をインラインで吸着回収することができた. 3.細胞増殖および色素漏出・回収を伴う赤ビ-ト毛状根の高密度培養を試みたところ,培養液の空塔速度2.7m/h,培養期間674hにおいて,細胞増殖速度が6.7g/(m^3・h),色素生産速度が8.1×10^<-3>g/(m^3・h)となり,培地循環型バイオリアクターで連続かつ長期的に二次代謝産物生産を行えることが明らかとなった.
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