本研究においては、アレルギー疾患のおもな原因物質であることが知られている、イムノグロブリンE(IgE)の産生調節機構を明らかにし、その過剰生産を選択的に抑制できる薬剤を開発することを目的として種々の検討を行った結果、以下のような成果が得られた。 1.抗原特異的IgE産生系においてIgE mRNAを高感度に検出、定量する方法として、IgE特異的RT-PCR法の開発を行った。IgEクラスに特異的なプライマー配列を決定し、PCR法におけるサイクル数を最適化することによって他のクラスの抗体のmRNAと交差反応することなく特異的にIgE mRNAを検出することが可能となった。また、この方法においては10^6個程度の脾臓細胞を用いれば抗原特異的なIgE mRNAの検出に十分であり、非常に高感度であると考えられる。IgE産生の調節機構を解明する上で遺伝子レベルでの解析は必須であり、今回開発した方法はこの点において非常に有用な技術であると考えられる。 2.イミダゾールの誘導体に関して、抗原特異的IgE産生に対する抑制効果を評価した。イミダゾール環の1位から5位を多種の置換基で修飾し検討を加えた結果、多数の誘導体がIgE産生抑制活性を有していることが明らかとなった。特に4位をアルキル基で修飾した化合物にイミダゾールより強いIgE産生抑制作用が認められた。また、4位、5位をそれぞれ芳香環、メチルカルボニルエステルで修飾した化合物についても強いIgE産生抑制活性を有していることを見い出した。これらの化合物の基本骨格であるイミダゾールは、細胞内cAMP濃度を低下させる作用が知られており、この点においてこれらの化合物の生理的な作用メカニズムの解明は、IgE産生メカニズムの解明において非常に重要であると考えられ、現在さらに検討を加えている。
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